フランチャイズ本部・加盟店の役割分担— カスハラ対策は誰の義務か
公開: 2026年7月31日
フランチャイズ形式のビジネスでは、本部と加盟店とで従業員の雇用主が異なるのが一般的です。
カスハラ対策の措置義務は「労働者を雇用する事業主」に課されるため、実際に誰が対応の主体になるのかを整理しておく必要があります。
本記事では、フランチャイズ本部・加盟店の役割分担の考え方を整理します。
1. 措置義務は雇用主である加盟店に生じるのが基本
1-1. 雇用主責任の原則
カスハラ対策の措置義務は、原則として労働者を雇用する事業主(加盟店オーナー・加盟店法人)に課されます。
本部は雇用主ではないため、法的義務の主体は加盟店側になります。
ただし、フランチャイズ契約で本部が一定の指導・監査権限を持つ場合、実務上の役割分担は契約内容によります。
契約書と法務・社労士の意見を確認しながら整理します。
1-2. 本部の立場
本部は、ブランド統一・マニュアル提供・研修実施など、加盟店を支援する立場になり得ます。
義務の履行責任者ではない一方、ブランド毀損リスクから加盟店への支援動機もあります。
本部と加盟店の役割を、契約・マニュアル・研修資料で明文化すると混乱が減ります。
「本部がやる/加盟店がやる」の境界を曖昧にしないことが重要です。
1-3. 複数店舗・複数雇用主
オーナーが複数店舗を運営する場合、店舗ごとに雇用主が同じでも、記録・情報共有は店舗横断で行う必要があります。
店舗間共有は店舗間の情報共有を参照してください。
本部が運営する直営店と加盟店で、雇用主が異なる点に注意します。
直営店の事例を、加盟店マニュアルにそのまま転用しないよう配慮します。
2. 本部が支援できること
2-1. マニュアル・ひな形の提供
方針文書・掲示文・記録様式・研修資料のひな形を本部が提供し、加盟店が自社向けにカスタマイズします。
方針ひな形は方針文書を参照してください。
加盟店がゼロから作る負担を下げ、ブランド横断の水準を揃えられます。
ひな形の利用は任意ではなく、契約上の義務とする場合もあります。
2-2. 研修の実施
本部主催の研修(オンライン・集合)で、カスハラの定義・初動対応・エスカレーションを統一します。
研修実施は研修実施も参照してください。
加盟店オーナー・店長向けの研修と、現場スタッフ向けの研修を分けると効果的です。
研修受講記録を、コンプライアンスの証跡として残します。
2-3. 相談窓口の設計支援
加盟店単独では相談窓口の設置が難しい場合、本部が外部相談窓口を一括契約し、加盟店従業員も利用できる設計もあります。
外部窓口の選び方は外部相談窓口の選び方を参照してください。
個人情報・事案情報の取り扱いは、契約で明確にします。
加盟店従業員が本部に直接相談する設計は、利益相反に注意が必要です。
3. 加盟店が実施すること
3-1. 方針の明示と掲示
加盟店が、自店舗に方針を掲示し、従業員に周知します。
掲示の考え方は店舗掲示と約款も参照してください。
本部ひな形をベースに、店舗名・相談窓口・緊急連絡先を自店舗向けに更新します。
掲示と実際の運用が一致しているか、店長が確認します。
3-2. 就業規則・雇用契約との整合
加盟店が雇用主として、就業規則への反映・雇用契約との整合を行います。
就業規則への落とし込みは就業規則への落とし込みを参照してください。
本部マニュアルと加盟店の就業規則が矛盾しないよう確認します。
社労士等の専門家は、加盟店が個別に手配するのが一般的です。
3-3. 事案対応と記録
カスハラ事案の初動対応・記録・再発防止は、加盟店が実施します。
記録の型は記録すべき9項目、初動は初動対応を参照してください。
重大事案は、フランチャイズ契約に基づき本部へ報告する義務がある場合があります。
報告ラインを契約・マニュアルで明確にします。
4. 契約・ガバナンス
4-1. フランチャイズ契約への盛り込み
カスハラ対策の実施義務・本部支援範囲・報告義務を、フランチャイズ契約または別添マニュアルに盛り込みます。
2026年10月の義務化を契機に、契約改定を検討する本部も増えています。
法務・社労士の確認を経て、双方の権利義務を明確にします。
加盟店への一方的な負担転嫁にならないようバランスを取ります。
4-2. 監査・コンプライアンスチェック
本部が、加盟店の方針掲示・研修実施・記録体制をチェックする監査項目を設ける場合があります。
監査は義務履行の支援であり、雇用主責任の代替ではありません。
チェックリストを共有し、加盟店の負担を最小化します。
不備があれば、改善期限と支援内容を明示します。
4-3. 想定シナリオ:加盟店スタッフが本部に相談
加盟店スタッフがトラブルを本部に直接相談したが、雇用主は加盟店であり、本部は対応主体ではない場面を想定します。
本部は、加盟店オーナーへの連絡・マニュアル提供・外部窓口案内に留めるなど、役割を明確にします。
契約・マニュアルで「相談の受け方」を事前に決めておくと混乱が減ります。
スタッフには、まず加盟店内の窓口を案内し、併せて外部窓口も提示します。
5. 2026年10月義務化への対応
5-1. 本部・加盟店の共同ロードマップ
2026年10月までに、ひな形提供・研修・掲示・記録体制のロードマップを本部と加盟店で共有します。
小規模加盟店は、本部支援への依存度が高くなることが予想されます。
直営店の先行事例を、加盟店向けケーススタディとして活用できます。
スケジュールと責任分界を、文書で合意します。
5-2. ブランド横断の情報共有
トラブル客・要注意客の情報を、ブランド横断で共有する仕組みは、加盟店の安全にも有効です。
情報共有の考え方は店舗間の情報共有を参照してください。
個人情報・プライバシーに配慮した共有ルールが必要です。
共有範囲を契約・マニュアルで限定します。
5-3. 専門家への相談
雇用主が加盟店である点、本部の支援範囲、契約改定の要否は、専門家に個別確認が必要です。
本部・加盟店それぞれが、顧問社労士・弁護士を持つ場合もあります。
本記事は一般的な整理であり、個別の契約関係は専門家にご確認ください。
2026年10月を機に、契約・マニュアルの見直しを検討します。
6. よくある質問
Q. カスハラ対策の義務は本部と加盟店のどちらですか
原則、労働者を雇用する加盟店(オーナー)に措置義務が課されます。
本部は支援役になることが多いですが、契約内容で確認してください。
Q. 本部がマニュアルを出すだけで足りますか
加盟店が雇用主として、掲示・窓口・記録・対応を実施する必要があります。
本部マニュアルは、加盟店の実施を支援するものです。
Q. 加盟店スタッフが本部に直接相談してきました
契約・マニュアルで相談の受け方を決め、加盟店窓口・外部窓口を案内します。
本部が雇用主責任を負う設計にはなりません。
Q. 店舗間でトラブル客情報を共有できますか
ブランド横断の共有は有効ですが、個人情報に配慮したルールが必要です。
考え方は店舗間の情報共有を参照してください。
Q. フランチャイズ契約に何を盛り込むべきですか
実施義務・本部支援範囲・報告義務・監査項目を、法務確認のうえ盛り込みます。
2026年10月の義務化を機に改定を検討します。
7. まとめ
- 措置義務の主体は原則として加盟店(雇用主)
- 本部はマニュアル・研修・外部窓口等で支援
- 役割分担を契約・マニュアルで明文化
- 加盟店が掲示・記録・事案対応を実施
- ブランド横断の情報共有はプライバシーに配慮
関連記事: 店舗間の情報共有 / 方針文書 / 就業規則への落とし込み
8. 注意
本記事は一般的な対応の考え方の例示であり、法的助言ではありません。
個別の事案対応は専門家にご確認ください。
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