カスハラ対策の掲示文ひな形— 丁寧・標準・毅然の例文
公開: 2026年7月21日 / 更新: 2026年10月4日
顧客向けの掲示は、予防と「労働者を守る会社である」ことのメッセージを兼ねます。
社内方針の全文をそのまま貼る必要はありません。短い掲示用文面を別途用意します。
本記事では、丁寧・標準・毅然の3パターンと、置き場所・版管理・社内文書との切り分けを整理します。
顧客向け掲示を法定必須と誤解しないよう、労働者への社内周知とは役割を分けてください。
社内の方針宣言は方針ひな形、現場手順はマニュアルのひな形側に置きます。
1. 掲示の置き場所と役割
1-1. よく使う置き場所
- 店頭入口・会計付近(目に入る高さ)
- Webサイトのフッターやサポートページ
- 予約・受付画面の注意書き(飲食・クリニック等)
1-2. 社内周知との違い
社内向けは「窓口・不利益取扱い禁止・悪質事案への姿勢」まで書く必要があります。
顧客向けは、正当な申し出を歓迎しつつ、相当でない言動にはお断りがあること、を短く伝えるだけで足ります。
掲示が長文化してきたら、社内向け宣言は方針側へ戻してください。
1-3. 大きさ・視認性の目安
店頭では、会計待ちの視線の高さにA4〜A3相当が読みやすいです。
文字を詰め込みすぎると読まれないため、例文B程度の長さを上限の目安にします。
Webはフッターより、サポートページや予約確認メールの一文の方が目に入りやすいことがあります。
1-4. 拠点ごとに変えてよいこと/揃えること
揃えるのは「正当な申し出は歓迎/相当でない言動にはお断り」という骨格です。
変えてよいのはトーンの強さと、業種用語(患者/ご利用者/お客様)です。
骨格まで拠点裁量にすると、チェーン全体の説明責任が弱くなります。
2. 例文A — 丁寧寄り
2-1. 向いている場面
医療・介護、教育、待ち時間クレームが多い店頭など、関係性が長く続く現場向けです。
2-2. 文例
当店では、お客様に安心してご利用いただけるよう努めております。
あわせて、スタッフが安心して働ける環境づくりにも取り組んでいます。
ご意見・ご要望は歓迎いたします。
一方で、暴言や威嚇など、スタッフの就業環境を害する言動には対応を控えさせていただく場合がございます。
ご理解のほどお願いいたします。
3. 例文B — 標準
3-1. 向いている場面
小売・飲食・サービス業の店頭・Webで、まず1枚置くときの基本形です。
3-2. 文例
当店は、カスタマーハラスメントに該当する行為に対し、組織として毅然と対応します。
正当なお申し出には誠実に対応いたしますが、社会通念上相当でない言動にはお断りする場合があります。
4. 例文C — 毅然寄り
4-1. 向いている場面
警備・深夜帯・過去に長時間拘束や威嚇が多発した拠点など、強い線引きが必要な場面向けです。
医療・介護等では丁寧寄りが無難な場合も多いため、客層で選んでください。
4-2. 文例
当店は従業員の人権と就業環境を守ります。
暴言、過度な要求、長時間の拘束、威嚇その他のハラスメント行為には、対応の中止・退店のご案内・今後のご利用をお断りすることがあります。
5. トーンの選び方と失敗例
5-1. 客層で変える
待ち時間クレームが多い店頭は丁寧寄り、深夜セルフ店は毅然寄り、というように現場のリスクでトーンを変えます。
誤給油や送迎遅延のような個別トラブルの説明は掲示に書かず、マニュアルの事例章へ寄せます。掲示は「歓迎/お断り」の短い宣言だけにすると、張り替え回数が減ります。
5-1b. 例文A/B/Cの比較
| 例文 | 向く客層 | トーン | 向かない場面 |
|---|---|---|---|
| A 丁寧 | 医療・介護・教育、常連が多い店頭 | 柔らかい | 威嚇が頻発する深夜帯 |
| B 標準 | 小売・飲食・一般サービス | 中庸 | 特段なし(迷ったらここ) |
| C 毅然 | 警備・深夜・過去に拘束が多い拠点 | 強い | 関係性が長く続く常連店頭 |
迷ったらBから始め、問い合わせや現場ヒアリングでA/Cへ寄せる方が、最初からCを全面に出すより安全です。
5-2. 方針全文を店頭に貼る失敗
方針の詳細版を店頭に貼ると、窓口名・不利益取扱い禁止など社内向け情報が顧客の目に入り、読む側も現場も混乱します。
店頭は例文A〜Cのいずれか1パターン、社内は方針・マニュアル、と役割を固定してください。
文書の順番は掲示と方針の揃え方も参考になります。
5-3. 「罰則」「警察」を先に書く失敗
掲示の冒頭から罰則や警察を強調すると、正当な苦情まで萎縮させる印象になります。
先に「ご意見は歓迎」、そのあとで「相当でない言動にはお断り」の順が無難です。
警察相談の具体手順は掲示ではなく、マニュアルと上長判断に置いてください。
6. 掲示文を書くときの具体判断
6-1. 「毅然」を選びすぎた店の想定例
想定例です。常連が多いスーパーの入口に例文Cを大きく貼ったところ、「脅されている」と感じた顧客からの問い合わせが増える——という場面を想定してください。
客層が穏やかな店頭では例文AかBに戻し、毅然寄りは深夜帯や警備が必要な拠点に限定する方が安全です。
6-2. Webだけ丁寧・店頭だけ毅然のズレ
サイトは丁寧、店頭は毅然だと、来店時に「サイトと違う」と言われます。
トーンの強さは揃え、文字数だけ媒体に合わせて短くするのが扱いやすいです。
6-3. 英語併記を足すとき
インバウンドが多い拠点では短い英語併記を足せます。
翻訳は機械任せにせず、日本語のトーン(丁寧/標準/毅然)と強さが一致しているかを確認してください。
多言語の注意点は多言語掲示の注意も参考になります。
7. 運用Tips
7-1. 証跡として残す
- 掲示した日付・場所を社内記録に残す
- 文言を変えたら版を上げ、古い掲示を回収する
- 写真を残すと、拠点間のばらつき確認がしやすい
7-2. たたき台の作り方
カスガード(kasuguard)の文書生成では、スタンダード以上で掲示文ひな形も作成できます。
生成物は一般的な文例です。ブランドトーンと「お断り」の強さは自社で調整してください。
業種別の力点は業種別ポイントを見て、掲示ではなくマニュアル事例へ落とす方がよい内容もあります。
7-3. 方針改定との連動
方針の版が上がったら、掲示の「お断り」表現が方針と矛盾していないかを点検します。
矛盾があると、現場が「方針では中止できるのに掲示は弱い」と迷いやすくなります。
8. よくある質問
Q. 掲示は法律で必須ですか?
いいえ。顧客向け掲示は、措置義務の必須項目ではありません。
労働者への方針周知とは別の、推奨施策として位置づけます。
「掲示さえすれば社内周知は不要」という誤解も避けてください。
Q. 3パターン全部貼りますか?
いいえ。拠点の客層に合う1パターンを選び、版管理します。
入口と会計で別トーンを並べると、どちらが正本か分からなくなります。
Q. 英語併記は必要ですか?
必須ではありません。インバウンドが多い拠点だけ、短い英語を足す程度で足りることが多いです。
日本語のトーン(丁寧/標準/毅然)と強さが一致しているかを確認し、翻訳だけ強くならないようにしてください。
Q. Webと店頭で文言を変えてよいですか?
トーンの強さは揃えた方が混乱が少ないです。文字数だけWeb向けに短くする程度が扱いやすいです。
Webだけ毅然、店頭だけ丁寧、のように強さをずらすと、現場説明が割れます。
Q. 出入り禁止まで書いてよいですか?
掲示では「お断りする場合がある」程度に留め、個別の通知文は別文書にします。
通知書の型は出入り禁止通知書の書き方を参照してください。
Q. 掲示を外したら「対策をやめた」と見られますか?
見た目の印象はある一方、顧客向け掲示の有無だけで措置義務の充足を判断しないでください。
方針の周知、相談体制、事後対応、プライバシー保護、不利益取扱いの禁止、悪質事案への対応など、公式の案内で求められる範囲を確認します。
制度の概要は厚生労働省の案内を参照してください。
張り替えや撤去をするときは、版管理の記録を残し、社内文書側の運用が止まっていないことを確認してください。
9. まとめ
- 顧客向けは短く、社内方針の全文は貼らない
- 丁寧・標準・毅然から客層に合う1つを選ぶ
- 法定必須と誤解せず、社内周知と役割を分ける
- 掲示日・版・写真を残し、古い掲示を回収する
- 媒体間・拠点間でトーンの強さを揃える
10. 注意
本記事の例文は一般的な文例であり、法的助言ではありません。
掲示内容の最終判断は自社と専門家にご確認ください。
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