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パワハラ対策とカスハラ対策は何が違う?— 一つの窓口・記録様式で両方の義務を満たす方法

公開: 2026年7月23日

「うちはもうパワハラ対策をやっているから、カスハラも自動でカバーされている」と考えている担当者は少なくありません。
厚生労働省の資料でも、事業主の対策が義務となっているハラスメントとしてパワーハラスメント・カスタマーハラスメント(令和8年10月1日から)・セクシュアルハラスメントが同じ並びで整理されており、根拠となる条文の構造もほぼ共通です。
ただし、対象となる相手方が違うため、既存の体制のままでは抜け落ちる部分があります。

1. 同じ「4本柱」、違う「相手方」

パワハラ防止措置(労働施策総合推進法30条の2)で求められる措置は、おおむね次の4本柱です。
カスハラ対策もこれと同じ構造を踏襲します。

  • ① 方針の明確化と周知・啓発
  • ② 相談体制の整備
  • ③ 事案発生後の適切な対応(事実確認・記録)
  • ④ プライバシー保護・不利益取扱いの禁止

構造は同じでも、パワハラは社内の労働者同士の言動が対象であるのに対し、カスハラは顧客・取引先等の社外の第三者からの言動が対象です。
この違いが、既存の体制をそのまま流用できない理由になります。

2. パワハラ用の就業規則・懲戒規定は、カスハラにそのまま使えない

パワハラ対策では「行為者に懲戒規定を適用する」ことが柱の一つになりますが、カスハラの行為者は自社の従業員ではなく顧客等です。
懲戒処分の対象にはできないため、方針文書に書くべき内容は「行為者への懲戒」ではなく「行為への対応方針(説明・警告・取引停止・警察や弁護士への相談基準)」に置き換わります。

既存のパワハラ向け方針文書をコピーしてカスハラ用に流用すると、この置き換えが漏れがちです。
方針の書き方はカスハラ対応方針の書き方とひな形で個別に整理しています。

3. 相談窓口は「一本化」してよい

一方で、相談体制については無理に分ける必要はありません。窓口担当者・相談フローをパワハラ・セクハラ・カスハラで共通の一つの窓口として運用し、相談内容に応じて対応手順を出し分ける設計が現実的です。
専任者を置けない中小企業ほど、窓口を分けるコストの方が負担になります。

窓口を一本化する場合でも、相談受付票には「相手方が社内か社外か」「カスハラ・パワハラのどちらに該当するか」を最初に記録する欄を設けておくと、後から統計を取り分けられます。

4. 記録様式も共通フォーマットで足りる

「措置を講じたこと」を証明する記録も、パワハラ・カスハラで求められる項目(発生日時・場所・当事者・内容・対応経過)はほぼ共通です。様式を分けて二重運用するより、ハラスメント類型を選択する1項目を追加した共通様式にする方が、記録漏れが起きにくくなります。
記録すべき9項目の詳細は相談・事案記録の様式をご覧ください。

5. 既存の体制がある会社が追加すべき3点

  1. 方針文書に「顧客等からの言動」への対応方針を追記する
  2. 相談受付票に「社内/社外」「ハラスメント類型」を選択する項目を足す
  3. 現場(店頭・電話対応窓口)向けの掲示・研修を、カスハラの観点で追加する

ゼロから作り直す必要はなく、既存のパワハラ体制に部品を足していく発想で対応できます。

6. 注意

本記事は公表資料に基づく一般的な制度解説であり、法的助言ではありません
自社の就業規則・既存体制との整合は、厚生労働省の指針・マニュアル等の一次資料と、弁護士・社労士等の専門家にご確認ください。
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