取引先(BtoB)からのハラスメント、対顧客との違い
公開: 2026年7月30日
カスハラというと一般消費者からの言動をイメージしがちですが、厚生労働省の指針でも、顧客等には取引先企業の担当者も含まれるという考え方が示されています。
BtoB(企業間取引)特有の事情を踏まえた対応を整理します。
社内の営業・開発・サポート担当が、取引先から威圧・長時間の叱責を受ける場面も、カスハラ対策の対象になり得ます。
1. 取引先からの言動も対象になり得る
1-1. 「顧客等」の範囲
「顧客等」の範囲には、一般消費者に限らず、発注元・取引先企業の担当者も含まれ得るとされています。
自社の従業員が、取引先担当者から就業環境を害する言動を受けた場合も、対策措置の対象になり得ます。
定義の整理はクレームとカスハラの違いも参照してください。
BtoCとBtoBの両方を、方針文書でカバーすることを検討します。
1-2. BtoB特有の圧力
「取引停止」「契約解除」をちらつかせた要求、納期・品質を理由とした人格攻撃が典型です。
売上・案件への影響を恐れ、報告しにくい構造があります。
「取引先だから我慢」という空気を、組織として是正します。
報告が評価・案件配分に影響しない旨を明示します。
1-3. 担当者個人への集中
取引先担当者が、自社の営業・エンジニア個人に直接、長時間の電話・メールで追及するケースがあります。
担当者をローテーションし、上長・管理者が組織対応に切り替えます。
個人の携帯・私的連絡先への集中を防ぐ運用も検討します。
エスカレーションは判断基準を参照してください。
2. 対顧客(BtoC)との違い
2-1. 契約・取引関係の非対称性
BtoBでは、取引先が発注元である場合、自社が弱い立場に置かれやすい構造があります。
「お客様」というより「取引先」だが、カスハラは起き得る、という認識を社内に共有します。
経営層・営業責任者が、取引先との関係と従業員保護のバランスを判断します。
現場担当者個人に全てを押し付けません。
2-2. 対応の打ち切りの難しさ
一般消費客とは異なり、取引関係の継続が前提のため、対応打ち切りの判断が難しい場面があります。
それでも、従業員の安全・健康を優先する方針を、事前に共有しておきます。
取引先の上長・購買部門へのエスカレーションルートを、あらかじめ決めておくことも有効です。
社内の判断基準を明確にし、現場の裁量だけに委ねません。
2-3. 記録と社内共有
取引先名・担当者・要求内容・言動の概要を、社内で記録・共有します。
記録の型は記録すべき9項目を参照してください。
同じ取引先からの繰り返しは、営業責任者・経営層で対応方針を決めます。
取引継続可否の判断も、組織の役割です。
3. 現場での対応の型
3-1. 上長・営業責任者の介在
一定時間を超えた電話・メール、威圧・人格攻撃は、速やかに上長が介在します。
現場担当者に、取引先との交渉を一人で続けさせません。
初動対応は初動対応も参照してください。
取引先の上長への連絡テンプレートを用意します。
3-2. 仕様変更・納期の約束
取引先からの仕様変更・納期短縮の要求は、現場で即答せず、社内確認のフローを経ます。
現場での口約束が、後日のトラブルの火種になります。
「確認して折り返します」を徹底し、営業・開発・製造の連携で回答します。
無理な約束を、カスハラ的圧力で飲まされない体制を整えます。
3-3. 対応時間の上限
電話・オンラインミーティングの対応時間に上限を設け、超過時は別日に設定するルールを検討します。
24時間対応を前提としない文化づくりも、Burnout防止に有効です。
取引先にも、対応時間のルールを丁寧に説明します。
境界線は、取引関係を維持しつつ引くことが可能です。
4. 組織体制と方針
4-1. 方針文書への明記
方針文書に、取引先担当者からの言動も対象になり得る旨を明記します。
ひな形は方針文書を参照してください。
BtoC向けの記載だけでは、BtoB現場が保護されない恐れがあります。
営業・開発・サポート全ての接点をカバーします。
4-2. 営業・開発向け研修
取引先からの威圧的言動の例、報告のタイミング、エスカレーションを研修します。
研修実施は研修実施も参照してください。
「取引先だから我慢」ではなく、組織が守る文化を、経営層から示します。
事例を匿名で共有し、対応の型を更新します。
4-3. 経営層の関与
重大な事案や、取引継続可否の判断は、経営層・営業責任者が関与します。
現場担当者個人に、取引停止のリスクを背負わせません。
従業員保護と取引関係のバランスは、経営判断です。
専門家への相談も検討します。
4-4. 取引先向け接点ルールの明示
対応可能時間・連絡手段・エスカレーション先を、取引先向けに簡潔な1枚資料で共有します。
無制限の即応を前提としない文化を、契約交渉段階から丁寧に説明します。
営業・開発・サポートの各チームで、取引先からの威圧事例を四半期ごとに匿名共有します。
繰り返しが見える取引先は、営業責任者レベルで対応方針を決めます。
5. 記録と再発防止
5-1. 記録すべき項目
日時・取引先・担当者・要求内容・言動の概要・対応者・エスカレーションを記録します。
メール・チャットのログも、可能な範囲で保存します。
詳細は記録すべき9項目を参照してください。
同じ取引先からの繰り返しを追跡します。
5-2. 取引先へのフィードバック
繰り返しが続く場合、取引先の上長・購買部門に、社内の対応方針を伝える選択肢もあります。
関係悪化のリスクはあるため、経営層の判断で行います。
契約書・取引基本契約に、相互のハラスメント防止条項を入れる動きもあります。
法務確認が必要です。
5-3. 想定シナリオ:納期を理由にエンジニアが2時間叱責された
納期遅延を理由に、取引先担当者が自社エンジニアを電話で2時間叱責した場面を想定します。
エンジニアは報告をためらい、体調不良で欠勤しました。
エスカレーション基準と、取引先上長への連絡ルートがあれば、早期の組織対応が可能です。
「取引先だから我慢」ではなく、記録と上長介在が鍵です。
5-4. チェックリストで最終確認
方針の掲示、相談窓口の周知、記録の型、エスカレーション基準が、現場で参照できる状態になっているかを確認します。
研修を受けたスタッフが、実際の場面で何をすればよいかを説明できるかも、チェック項目に含めます。
四半期ごとに、トラブル事例を匿名で共有し、マニュアルと研修内容を更新するサイクルを回します。
記録と研修の正本は記録すべき9項目と研修実施を参照してください。
6. よくある質問
Q. 取引先からの叱責もカスハラの対象ですか
取引先担当者からの言動も、顧客等に含まれ得るとされています。
定義はクレームとカスハラの違いを参照してください。
Q. 取引停止をちらつかせられて無理な要求を飲みました
無理な約束は現場でせず、上長・経営層の判断を仰ぎます。
記録を残し、組織で対応方針を決めます。
Q. BtoC向けの方針だけでは足りませんか
BtoBの接点もカバーするよう、方針文書・研修を整備します。
営業・開発・サポート全てが対象です。
Q. 取引先だから報告しにくいです
報告が案件配分・評価に影響しない旨を明示します。
相談窓口を、営業以外の部署にも設ける選択肢もあります。
Q. 取引先の上長に連絡してよいですか
繰り返しが続く場合、社内の判断基準に沿って、取引先上長への連絡を検討します。
経営層の承認を経ることが望ましいです。
Q. 現場で線引きに迷ったときはどうすればよいですか
現場で判断に迷った場合は、個人の裁量で抱え込まず、必ず上長・責任者に相談します。
組織としての対応方針が文書化されていれば、現場の負担と不安を大きく下げられます。
7. まとめ
- 取引先担当者も顧客等に含まれ得る
- 取引停止の圧力下でも現場で無理な約束をしない
- 上長・営業責任者が介在し個人攻撃を防ぐ
- 方針文書にBtoBを明記する
- 記録と経営層の判断で取引継続可否も検討
- 判断に迷ったら個人で抱え込まず、上長・責任者に相談する
関連記事: クレームとカスハラの違い / エスカレーション判断基準 / 方針文書
8. 注意
本記事は一般的な対応の考え方の例示であり、法的助言ではありません。
個別の事案対応は専門家にご確認ください。
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