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経営者・個人事業主自身がカスハラを受けたときの対応

公開: 2026年8月26日

カスハラ対策というと、 「従業員を守るために経営者・管理職が体制を作る」という構図で 語られることがほとんどです。
しかし、経営者自身・個人事業主自身がカスハラの対象になる場面も 少なくありません。 相談する上司がいない立場だからこその難しさを整理します。

1. 経営者・個人事業主特有の難しさ

1-1. 相談できる上司がいない

従業員であれば上司・人事部門に相談できますが、 経営者・個人事業主には社内に相談できる上位者がいないため、 一人で抱え込みやすい構造的な問題があります。
「経営者なのだから自分で解決すべき」という周囲の暗黙の期待も、 相談すること自体への心理的なハードルを上げてしまいます。

1-2. 「弱音を吐けない」立場の重圧

従業員の前では毅然とした態度を保つ必要があるという意識から、 経営者自身が受けた被害について社内で共有しづらいと感じるケースがあります。
事業主自身の心理的負担も、放置すれば経営判断そのものに影響しかねません。

1-3. 事業への影響を天秤にかけてしまう

悪質な顧客であっても、 売上・評判への影響を懸念して強く対応できないという 経営判断上のジレンマを抱えやすい立場でもあります。
特に地域密着型の事業では、 一人の顧客との関係悪化が地域内の評判に波及することを恐れて、 過度に譲歩してしまうケースも見られます。

2. 一人で抱え込まないための工夫

2-1. 外部の相談先を持っておく

社内に相談相手がいない分、 あらかじめ外部の専門家・相談機関とのつながりを 作っておくことが重要になります。
外部相談窓口の選び方はこちらも参照してください。

2-2. 同業者・経営者ネットワークの活用

同じ立場の経営者同士で情報交換できるコミュニティ・団体に参加することも、 「こういう時どうしているか」を共有できる貴重な場になります。
一人で判断する前に、他社の対応事例を知ることで 視野が広がることがあります。 自分の対応が「厳しすぎるのか、甘すぎるのか」を 客観的に振り返る材料にもなります。

2-3. 家族・パートナーへの共有

事業を共同で担う家族・パートナーがいる場合は、 受けた被害を一人で抱えず共有することで、 精神的な負担を分散させることができます。
事業のことを話す相手が身近にいるだけでも、 孤立感を和らげる効果は小さくありません。

3. 記録を残す習慣を自分自身にも適用する

3-1. 「従業員に求めることを自分もやる」

従業員には相談・事案記録を残すよう求めながら、 経営者自身が受けた被害を記録していないというケースは 珍しくありません。
相談・事案記録の残し方はこちらも参照してください。

3-2. 記録が後の判断材料になる

取引拒否・法的措置を検討する段階になって、 経緯を裏付ける記録が自分の記憶だけだったという状況は、 対応の説得力を弱めてしまいます。
日頃からの記録が、いざという時の交渉力につながります。 弁護士に相談する際も、時系列が整理された記録があるかどうかで、 相談の質・スピードが大きく変わります。

3-3. 個人事業主でも記録フォーマットは統一する

事業規模が小さくても、 日時・内容・対応状況を統一したフォーマットで記録しておくことで、 後から振り返りやすくなります。
記録様式のポイントはこちらも参照してください。

4. 事業への影響を踏まえた判断

4-1. 「今だけ我慢すればいい」という判断の危うさ

一度の悪質な要求に応じてしまうと、 同様の要求が繰り返される、あるいは他の顧客にも広がるリスクがあります。
短期的な事業への影響だけでなく、 中長期的な視点で判断することが重要です。 「一件くらい」という積み重ねが、 気づけば従業員の疲弊や離職につながっていることも少なくありません。

4-2. 損切りの判断基準を自分の中に持っておく

「ここまでの要求には応じるが、これ以上は取引を断る」という 自分なりの判断基準をあらかじめ持っておくことで、 その場の感情や圧力に流されずに対応できます。
対応方針のひな形はこちらも参照してください。

4-3. 事業承継・引き継ぎの場面での注意

事業承継の場面では、 先代が我慢して応じてきた悪質な要求を、 後継者がそのまま引き継いでしまうことがあります。
事業承継・引き継ぎとカスハラ対応の考え方はこちらも参照してください。

5. 従業員がいる場合の見せ方

5-1. 経営者自身の対応を従業員に見せることの効果

経営者が悪質な要求に毅然と対応する姿を見せることは、 従業員にとって「うちの会社は守ってくれる」という 安心感につながります。

5-2. 弱さを見せることも時には必要

常に強い姿だけを見せる必要はなく、 「自分もつらかった」と共有することで、 従業員が被害を報告しやすい雰囲気を作ることにもつながります。

5-3. 経営者の対応が社内の基準になる

経営者自身がどう対応したかは、 明文化されたマニュアル以上に、 社内の実質的な行動基準として従業員に伝わっていきます。
日頃からの言動が、そのまま組織文化になることを意識しておく必要があります。 マニュアルに書かれた内容と経営者の実際の対応が食い違っていれば、 従業員はマニュアルではなく経営者の行動の方を規範として受け取ります。

6. よくある質問

Q. 個人事業主でもカスハラ対策義務化の対象になりますか?

従業員を雇用している場合は、 個人事業主であっても事業主としての安全配慮義務の考え方が適用されます。
従業員がいない一人事業主の場合は、 義務化の直接の対象ではありませんが、 自身の心身を守るための備えは同様に重要です。 取引先とのフリーランス契約が絡む場合は、 フリーランス新法の観点からの保護も別途検討の余地があります。

Q. 経営者が疲弊して事業を続けられなくなるケースもありますか?

実際に、悪質な顧客対応の積み重ねが 廃業・休業の一因になったという事例も報告されています。
早い段階での外部相談・法的対応の検討が、 事業継続のためにも重要です。 「自分さえ我慢すれば」という考え方が、 結果的に事業そのものを危うくしてしまうことを認識しておく必要があります。

Q. 家族経営の場合、家族間でどう役割分担すればよいですか?

一人が矢面に立ち続けるのではなく、 対応窓口を交代制にする、 判断に迷った際は必ず二人で相談するといったルールを あらかじめ決めておくことをおすすめします。
特定の一人だけが継続的に矢面に立ち続ける体制は、 その人物の心身の負担が限界に達した時点で 事業全体のリスクになりかねません。

Q. 経営者自身のメンタルケアはどう考えればよいですか?

従業員向けのメンタルヘルスケアの考え方は、 経営者自身にも同様に当てはまります。
被害者へのメンタルヘルスケアの考え方はこちらも参照してください。

7. まとめ

  • 経営者・個人事業主は相談する上司がおらず一人で抱え込みやすい構造がある
  • 外部の相談先・同業者ネットワーク・家族への共有で負担を分散する
  • 従業員に求める記録の習慣を経営者自身にも同様に適用する
  • 短期的な事業への影響だけでなく中長期的な視点で対応を判断する
  • 経営者自身の対応の姿が、そのまま社内の実質的な行動基準になる

8. 注意

本記事は一般的な対応の考え方の例示であり、法的助言ではありません
個別の事案対応は専門家にご確認ください。

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