マタニティハラスメント対策の基本— 妊娠・出産・育休をめぐるハラスメント
公開: 2026年8月1日
妊娠・出産・育児休業等の取得を理由とする不利益取扱いやハラスメント(いわゆるマタハラ・パタハラ)は、男女雇用機会均等法・育児介護休業法により、事業主に防止措置が義務付けられています。
カスハラ対策とは対象・法令が異なりますが、相談窓口・記録の整備は共通の考え方があります。
本記事では、マタニティハラスメント対策の基本を整理します。
1. マタハラの2つの型
1-1. 妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い
昇進・降格・配置転換・雇用契約の更新拒否など、妊娠・出産・育休等を理由とする不利益取扱いが該当し得ます。
本人の申告がなくても、周囲の言動・配置が不利益につながっていないか、管理職は注意が必要です。
各ハラスメントの違いはパワハラ・セクハラ・マタハラの違いも参照してください。
不利益取扱いは、言動だけでなく制度・配置の面でも発生します。
1-2. 言動によるハラスメント
「妊娠したら仕事に来るな」「育休明けの復帰を認めない」などの発言、産前産後の通院を理由とした嫌がらせが典型です。
パタハラ(育児休業等を理由とするハラスメント)も同様の防止措置が求められます。
カスハラ(顧客等からの言動)とは発信者が異なりますが、被害者の就業環境保護という観点は共通です。
社内の言動が中心となる点が、カスハラ対策との大きな違いです。
1-3. 管理職・同事者の無自覚な言動
「産休前にプロジェクトを任せられない」など、配慮のつもりが不利益・排除につながるケースがあります。
管理職研修で、適切な配慮と不利益取扱いの境界を学びます。
本人に確認せず、勝手に負担を減らす・仕事を外すことも、不利益取扱いに該当し得ます。
配慮は本人との対話を通じて行うことが重要です。
2. 防止措置の内容
2-1. 方針の明示
マタハラ・パタハラを行わない旨、相談窓口、対応方針を就業規則・社内規程・掲示で明示します。
方針文書の考え方は方針文書も参考にしてください。
カスハラ対策の方針とは別文書でも、内容の矛盾がないよう整備します。
妊娠・育休中の従業員向けに、窓口を分かりやすく案内します。
2-2. 相談窓口の設置
社内窓口に加え、外部窓口・労働基準監督署・ハラスメント相談窓口など、複数の相談経路を案内します。
外部窓口の選び方は外部相談窓口の選び方を参照してください。
相談したことによる不利益取扱いがない旨を、明確に周知します。
管理職が相談の入口にならないよう、人事・専任担当の窓口も設けます。
2-3. 事案への対応と再発防止
相談を受けたら、事実確認・被害者の保護・加害者への対応・再発防止を組織で行います。
記録の型は記録すべき9項目を参考にしてください。
カスハラ事案と同様、記録と再発防止のサイクルを回します。
法務・社労士への相談タイミングを、あらかじめ決めておきます。
3. 管理職・人事の実務
3-1. 妊娠・育休の申出時の対応
申出を受けたら、就業規則に基づき手続きを説明し、不利益取扱いにならない配置・評価を検討します。
「急に休むと困る」などの発言を、管理職がしないよう研修します。
産前産後の通院・体調変化への配慮も、制度と運用で明示します。
復帰後のキャリアパスについて、本人と対話する機会を設けます。
3-2. 評価・配置の見直し
育休前後の評価が不当に下がっていないか、定期的にチェックします。
育休中のプロジェクト除外が、昇進機会の喪失につながっていないかも確認します。
管理職研修に、評価・配置のバイアスをなくす内容を含めます。
研修実施は研修実施も参照してください。
3-3. カスハラ対策との役割分担
マタハラは社内の言動・制度が中心、カスハラは顧客等からの言動が中心です。
相談窓口を一本化するか、種類ごとに分けるか、従業員が迷わないよう整理します。
就業規則への落とし込みは就業規則への落とし込みも参照してください。
ハラスメント全般の相談窓口一覧を、1枚にまとめると有効です。
4. 記録とコンプライアンス
4-1. 記録すべき項目
申出日・相談内容・事実確認結果・対応方針・再発防止策を記録します。
個人情報・健康情報に配慮した厳格な管理が必要です。
詳細は記録すべき9項目を参照してください。
記録は法務・人事の限られた範囲で共有します。
4-2. 法令改正への追随
男女雇用機会均等法・育児介護休業法の改正に追随し、規程・研修を更新します。
カスハラ対策義務化(2026年10月)とは別法令ですが、同時期の整備で効率化できます。
専門家への確認を、改正時の定例にします。
従業員への周知もセットで行います。
4-3. 想定シナリオ:育休申出後の配置除外
育休申出後、管理職が「プロジェクトから外す」配慮をした結果、昇進候補から外れたという相談を想定します。
本人との対話なく勝手に仕事を外すことが、不利益取扱いに該当し得ます。
配慮は本人の希望を確認したうえで行うことが重要です。
管理職研修と相談窓口の整備が、予防と早期対応につながります。
5. 2026年10月カスハラ義務化との整理
5-1. 別法令だが共通する仕組み
相談窓口・記録・研修・再発防止の仕組みは、マタハラ対策とカスハラ対策で共通化できます。
人事・総務が両方を統括する場合、重複整備を避けつつ漏れを防ぎます。
カスハラの線引きはクレームとカスハラの違いを参照してください。
従業員向けの「どこに相談するか」一覧を作ると迷いが減ります。
5-2. 顧客からのマタハラ的言動
顧客が従業員の妊娠・育休を理由に嫌がらせをする場合、カスハラ対策の枠組みで対応します。
社内マタハラ防止と、顧客からの保護の両方が必要な場面です。
エスカレーションは判断基準を参照してください。
現場で我慢させず、組織が介在します。
5-3. 小規模事業者の進め方
規程整備・窓口設置・研修を、段階的に進めることも選択肢です。
専門家への相談を、着手前に一度行うことを推奨します。
カスハラ対策と同時期の整備で、相談窓口の一本化を検討できます。
従業員数が少ない場合でも、防止措置の義務は適用されます。
6. よくある質問
Q. マタハラとカスハラの違いは何ですか
マタハラは社内の言動・制度が中心、カスハラは顧客等からの言動が中心です。
詳細はパワハラ・セクハラ・マタハラの違いを参照してください。
Q. 妊娠届出後、仕事を外すのは配慮ですか
本人との対話なく勝手に仕事を外すことは、不利益取扱いに該当し得ます。
配慮は本人の希望を確認したうえで行います。
Q. 相談窓口はカスハラと同じでよいですか
一本化するか分けるかは組織の判断ですが、従業員が迷わない案内が重要です。
相談による不利益がない旨を明記します。
Q. 管理職は何を研修すべきですか
不利益取扱いの禁止、適切な配慮、相談窓口の案内を研修します。
研修実施は研修実施も参照してください。
Q. 顧客が妊娠を理由に嫌がらせをしています
カスハラ対策の枠組みで、現場の保護とエスカレーションを行います。
判断基準はエスカレーション判断基準を参照してください。
7. まとめ
- 不利益取扱いと言動の2つの型を理解する
- 方針・相談窓口・記録・再発防止を整備
- 配慮は本人との対話を通じて行う
- カスハラ対策と窓口・記録を共通化できる
- 管理職研修でバイアスと不適切な配慮を防ぐ
関連記事: パワハラ・セクハラ・マタハラの違い / 方針文書 / 就業規則への落とし込み
8. 注意
本記事は一般的な対応の考え方の例示であり、法的助言ではありません。
個別の事案対応は専門家にご確認ください。
まずは無料で基本方針を作ってみる(ログイン不要)
カスガード(kasuguard)の無料ジェネレーターは、業種と会社名を入れるだけでカスハラ対応の基本方針のひな形を生成します。登録すると対応マニュアル・掲示文・社内周知文の生成と、相談・事案記録台帳(無料は月3件)まで使えます。
まずは全体像を知りたい方へ:施行日までの準備チェックリスト10項目(無料PDF)→