入札・プロポーザルでカスハラ体制を聞かれたときの記載例— 提案書に書く範囲
公開: 2026年9月8日
公共入札や民間の提案依頼書(RFP)で、ハラスメント対策・カスハラ体制の記載を求められることがあります
提案書は営業文書ですが、ここに書いた内容は後の監査・契約管理でも参照されます
本記事は、記載例と「書いてよい範囲/書かない範囲」の整理です
対外説明の基本はBtoB取引先への説明、制度前提はカスハラ対策義務化の解説を確認してください
1. 入札・提案で問われやすい観点
1-1. 体制の有無より運用の具体
「方針があります」だけでは弱いことがあります
窓口・周知・記録・責任者の四点を短く書けるかが差になります
社内の土台は準備チェックリストで先に揃えます
1-2. 現場配置がある案件での追加
施設常駐・窓口業務・コール対応など顧客接点がある案件では、現場マニュアルとエスカレーションも触れます
マニュアルの型はマニュアル作成の考え方です
1-3. 中小事業者が不利に見えない書き方
大企業並みの専門部署がなくても、「責任者名・周知頻度・記録様式」が書けていれば十分説明できます
現実的な体制は中小向け対応の整理を参照してください
2. 記載例(提案書用・短文)
2-1. 基本段落(150〜250字目安)
「当社はカスタマーハラスメント方針(制定○年○月、版v○)を定め、従業員向け相談窓口を設置しています。方針要旨と窓口案内を掲示・入社時周知により共有し、顧客接点業務では対応マニュアルに沿って二人対応・責任者エスカレーションを行います。事案は所定様式で記録し、再発防止の見直しに用います」
方針は方針ひな形、窓口は相談窓口の設置、記録は事案記録の様式と事実を一致させます
2-2. 表形式の記載例
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 方針 | 制定済み(日付・版) |
| 窓口 | 社内窓口/必要時外部相談経路 |
| 周知 | 入社時+年○回の短時間研修 |
| 現場対応 | マニュアル・二人対応・呼び出し基準 |
| 記録 | 所定様式・責任者確認 |
2-3. 整備中の正直な書き方
「方針・窓口の正式版を○年○月までに確定予定です。提案時点では暫定窓口(担当部署)を運用し、確定後に版情報を提出します」
虚偽の「完備」は、落札後の資料提出で破綻します
3. 添付とヒアリングでの注意
3-1. 添付してよいもの
- 方針の対外開示用要約(制定日・版付き)
- 窓口案内のサンプル(個人連絡先を伏せたもの)
- 研修実施の集計(回数・対象区分)
- 掲示の写真(必要時・個人が写らないもの)
掲示の整え方は掲示文の文例、研修は研修実施の進め方と研修記録の残し方です
3-2. 添付しないもの
個別事案の詳細、従業員の相談内容、未確定の内部草案、他社案件の守秘情報
「体制の証明」と「事案の開示」は別物です
3-3. ヒアリング用の口頭台本
「方針と窓口は整備済みです。現場はマニュアルで初動を揃え、暴言・威圧が続く場合は責任者へ切り替えます。記録は事実のみ残し、再発防止の見直しに使います。個別事案の開示は契約と個人情報の範囲で判断します」
罰則の深掘りを求められたら断定せず、罰則・勧告の整理の一般理解に留めます
4. 提出前チェックリスト
- 提案文の日付・版が社内正本と一致する
- 「完備」「全件開示可能」など根拠のない表現がない
- 常駐案件なら現場マニュアル言及がある
- 添付が要約中心で個別事案を含まない
- 営業・人事・必要時法務の三者確認をした
- 落札後に出せる実物資料の保管場所を確認した
5. 業態別の追記ポイント
5-1. 施設常駐・窓口業務
「現場責任者の呼び出し基準」「二人対応」「記録様式の保管場所」を一文ずつ足します
発注者が現場を見る前提のため、抽象的な方針名だけでは評価されにくいです
常駐人数が少ない場合は、本部ホットラインの有無も書きます
5-2. コール・オンライン対応
「通話の区切り基準」「スーパーバイザー連携」「記録のシステム項目」を短く書きます
物理掲示がない業態では、システム上の周知方法を明示します
在宅オペレーターがいる場合は、最新手順への到達手段も一文添えます
5-3. 提案書の禁止フレーズ集
「絶対にカスハラを発生させません」「あらゆる要求に応じます」「全件を即時開示します」
これらは後の契約管理で不利になりやすい表現です
代わりに「方針に沿い、窓口・周知・記録で運用します」と事実語に置き換えます
5-4. 落札後30日の実装チェック
提案に書いた版番号の文書が現場にあるか、研修予定がカレンダーに入っているか、記録様式が使えるかを確認します
提案勝ちだけで実装が空だと、初回監査で詰みます
実装担当と提案担当が違う場合は、受注キックオフで提案文を読み合わせます
5-5. 文字数制限が厳しいときの削り順
先に削るのは修飾語と決意表明です
残すのは制定日、窓口、周知頻度、記録の有無です
「当社は誠心誠意取り組んでおり」などの文は評価に寄与しにくいので優先削除します
それでも溢れる場合は、表形式に逃がして可読性を保ちます
削った詳細は別紙要約に移し、本文は四点が読める状態を死守します
審査側が後から聞く余地を残すより、本文で事実が揃っている方が強いです
5-6. 再提出・質問回答書での注意
一次提案と二次回答で版番号が食い違うと信用を損ないます
質問回答書でも同じ版・同じ窓口表現を使い、言い換えすぎないようにします
追加で求められた資料は、要約か全文かを確認してから用意します
急かされても個別事案の生データを添付しない原則は守ります
回答書の承認者も一次提案と同じ責任者に揃えると、社内の説明責任が明確です
6. よくある質問
Q. 文字数制限が厳しいときは何を残しますか?
方針の有無(日付)・窓口・周知・記録の四点だけ残します
美辞麗句より具体語を優先します
Q. 共同企業体(JV)のときは誰の方針を書きますか?
現場指揮を取る側の方針を主とし、構成員への適用関係を一文で補足します
各社バラバラのまま「あります」と書かないようにします
Q. 過去の事案件数を書けと言われたら?
開示方針に従い、件数のみ・期間限定など最小限にします
詳細経緯は提案書に載せません
Q. まだ研修を始めていない場合は?
実施予定時期を書き、虚偽の「実施済み」は避けます
提案後すぐに実施できる計画があるなら日程を添えます
Q. 保険加入を体制の代わりに書いてよいですか?
保険は補完であり、方針・窓口・周知の代替にはなりません
保険の説明は別資料にし、体制記載と混ぜない方が明確です
7. 運用で忘れやすい一点
提案書の表現は、落札後の現場マニュアルと矛盾しない語彙に揃え、営業独自の言い回しを増やしません
記載例は社内テンプレ化し、案件ごとにゼロから作文しない方が安全です
テンプレを使う場合も、制定日と版番号だけは案件ごとに必ず差し替えます
落札後キックオフでは、提案書に書いた窓口名・周知方法を現場台本と突き合わせ、ズレがあれば修正版を発注者へ出すかを判断します
常駐・巡回の別で記載の厚みが変わるため、案件タイプ別の見本を人事側で2〜3本用意しておくと安全です
8. まとめ
- 提案書には方針・窓口・周知・記録の四点を具体語で書く
- 整備中は期限付きで正直に書く。虚偽の完備は禁止
- 添付は要約と集計。個別事案は出さない
- 常駐案件は現場マニュアルとエスカレーションに触れる
- 提出前に版番号と三者確認を完了する
9. 注意
本記事は提案記載の例示であり、法的助言ではありません。
入札条件・契約条項・表明保証の解釈は、個別案件と専門家の見解に従ってください
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